あの日目にした何か

備忘録の数々。主にレビューと雑感。

シリアの花嫁

シリアの花嫁

 

シリアとイスラエルの国境にあるゴラン高原にある村のとある家族のお話。

もともとはシリアが領有していた土地なのだけれど、
第三次中東戦争を境にイスラエルが統治するようになったのがこのゴラン高原

イスラエルは国籍を発行することを認めているのだけれど、
シリアに帰属意識のある住民は国籍を取得することなく

「無国籍」の状態になる。

 

その状態で他国へ出国した場合、

(シリア自体はゴランを自国だと主張するため出入国扱いはしないようだ)

出国した彼らは形式上イスラエルとして治められている

故郷へ帰ることができなくなってしまう。

(帰国した際にパスポートを利用すると

自分がイスラエル人であることを認めることになるため)

 

花嫁のモナはシリアの首都であるダマスカス在住、

親族でタレントである親戚のもとへ嫁ぐ。

(会ったこともないそうでなぜ結婚するのかということは結局最後まで分からず終い。

個人的に気になる点ではあるのだが)

 

誰しもが立ち入ることのできないシリアとイスラエルの国境線で開かれる結婚式は、

彼女が家族と家族として同じ場所で過ごせるであろう最後の時間なのだ。

 

物語の進行に合わせ、地政学的な不安定さを少しずつ浮き彫りにさせながら

課題を乗り越え家族として一つの結婚式を成し遂げようとする姿は考えも及ばない。

 

この物語は必ずしもハッピーエンドと呼べる結果には繋がらない。

このような類の国際的問題が簡単ではないことを改めて痛感させられる。